四川で修行経験のある井桁良樹がその歴史や文化を14品で紡ぐ『飄香』のディナーコース。今回は、14品のはじまりに相応しいアミューズの一品〝芙蓉(フーロン)″をご紹介します。
成都を首都とする後蜀の二代皇帝、孟昶(もうちょう)は花にも形容しがたい美貌を持つ貴妃、花蕊夫人(かずいふじん)が愛した芙蓉の花を成都城内に植えました。そのため成都はかつて『芙蓉城』といわれ、今でも芙蓉の花がたくさん咲いています。
芙蓉には、朝は白い花が徐々にピンクに染まり、夕方には紅に変化する「酔芙蓉」という品種が存在します。花の色の変化を酒に酔って頬が染まる様子に喩えたものです。白居易の長恨歌で「芙蓉如面柳似眉(面は芙蓉の如く、眉は柳に似る)」と楊貴妃の美しさをたたえたように、中国では、芙蓉は美人を形容する言葉としても有名です。
四川省には、馓子豆花(サンズドウファ)という料理があります。温かく柔らかい豆腐の上に麻辣ソースをかけ、砕いた馓子(カリカリの揚げ菓子)をのせたローカルフード。ピリ辛でスッキリとした味わいとともに、豆腐のふわふわと馓子のカリカリ食感の対比が楽しい逸品です。
こうした、酔芙蓉や馓子豆花から着想を得たのが、飄香の〝芙蓉″です。
飄香の豆腐は、豆の中でも最上級とされる白花豆を使用しています。この白花豆と腊肉(ラーロー:四川で作られている干し肉)を一緒に煮たものをピューレ状にし、アイスを作ります。その上に豆乳で作ったふわふわのムースと、その真ん中に酔芙蓉の紅をイメージしたハーブをのせ、手作りの馓子を添えて完成です。
一口目は上の豆乳ムースの軽やかさ、二口目は下のねっとり濃厚で白花豆アイスとの一体感、最後にカリカリに砕いたサンズを混ぜることで、温度と食感の変化、味わいの広がりをお楽しみいただけます。
全体に塩味を効かせているので、シャンパーニュなどのファーストドリンクとの相性もピッタリです。
(アルコールが大丈夫な方は)お酒に酔って頬を染める楊貴妃の如く、ぜひドリンクペアリングとともにお楽しみください。
伝統四川料理を今に伝える成都・松雲門派の正統な継承者であるシェフ井桁良樹が日本人が知らない本当の四川料理を提供します。この記事を見て飄香に興味を持った方は、以下のコンテンツでより詳しく私たちについてご覧いただけます。