飄香の魅力
このページでは、私たちが考える「日本における伝統四川料理」のあり方、店名の由来など、『中國菜 老四川 飄香』のコンセプトにまつわることを、少し詳しくお話しさせていただきます。
目次
『飄香』は「伝統四川料理の伝承」をコンセプトとしていますが、四川省から遠く離れた日本の地で「伝統の伝承」を実践するというのは、一体どういうことなのでしょうか。
日本人向けに大きくアレンジした四川料理では、当然ながら「伝統の伝承」にはなりません。だからといって日本の食材や気候、日本人の味覚を無視し、中国だから成り立つ伝統的な手法を押し付けるのもまた「伝統の伝承」に反します。それが忠実な「手法の再現」であったとしても、伝統的な四川料理に脈々と流れる「精神の伝承」ではないからです。それはお客様に「驚いてもらう」「感動してもらう」「喜んでもらう」という、私たちの目的にも反します。
四川料理とは様式美を重んじる密教的で閉鎖的な料理ではありません。歴史を紐解くとわかるように、四川料理は少数民族や西洋の食文化も貪欲に取り込む柔軟さを持ち合わせています。身軽に変化することもまた、四川料理の特徴であり精神性の一つなのです。
伝統的な四川料理には「24の味付け」と「56の調理法」が存在します。これと四季折々の食材を組み合わせることで、「百菜百味(バイツァイバイウェイ)」という言葉に象徴されるように、膨大な数のレシピを作り出すことを可能にしています。そこに外部の食文化を受け入れる柔軟さと自由さが加わることで、四川料理特有の味の奥深さと幅広さが育まれてきました。
このような四川料理の手法と精神性、歴史をきちんと理解すれば、「経典川菜」と呼ばれる伝統的な四川料理の範疇の中であっても、日本の食材や気候に合った、日本人に喜ばれる伝統四川料理を生み出せると考えています。これを具現化したのが飄香の料理の数々なのです。
悠久の歴史の中で複雑に進化してきた伝統四川料理は、多様性のある食文化の中で育った日本人が好む、日本人に愛されやすい料理です。私自身が四川料理に魅了されたのも、皆様と大きく異なる味覚を持っていたからではありません。日本人らしい味覚を持っていたからだと、四川料理を学ぶほどに感じます。そんな日本人と相性がいい伝統四川料理を多くの日本人がこれまで知らなかったのは、調理法の習得や食材の調達が難しく、それを日本に伝える人がこれまで存在しなかったからです。そしてそれを行うのが、私と飄香の使命だと考えています。
四川料理は舌を楽しませるだけでなく、「不老長寿の源」であることも重視しています。古代中国では、料理人は皇帝の病や不調を食で治す「食医」と呼ばれ、医者よりも位が高かったと言われています。食は人の身体や健康と直結する存在だからこそ、風土・気候、季節や人といった環境を考慮し、香辛料や食材が持つ効能を組み合わせて料理が考案されてきました。そして飄香もまた、この「医食同源」の精神を強く引き継いでいます。ただ美味しいだけではなく、化学調味料は一切使用せず、できるだけ旬の健康的な食材にこだわり、必要であれば自社で野菜を栽培するなどして、健康を意識した安全な食の提供にもこだわっています。
成都から南に300kmほど下った蜀南宜賓市には「蜀南竹海」と呼ばれる自然保護区があります。その名は宋代の詩人・黄庭堅の詩に由来しており、中国10大美林の一つとされています。総面積120平方kmの区内に58種の竹が群生し、夏でも30℃以上にならないため、四川省やその周辺で暮らす人々の避暑地にもなっています。
四川省での修行時代、竹林がなびく様子が描かれた蜀南竹海の看板をバス停で見かけました。その看板には、飄々と風が吹き、風に乗って竹の香りがそよぐ様を表した「飄香」という言葉が書いてありました。その看板と言葉に興味を刺激され、成都からバスで4時間かけて蜀南竹海に向かうと、そこはまさに竹の海。風に吹かれて竹が雄大にそよぐ姿に心打たれた私は、もし自分のお店を持つなら名前は飄香にしようと決意しました。
飄香の店舗には竹を描いた絵やインテリアが飾られており、食器には竹の絵柄があしらわれています。竹は四川を象徴する植物であるとともに、店名の由来であり、私たちのシンボルでもあるのです。
飄香のロゴマークにも由来があります。中国最初の修行の地は上海でしたが、その修行の中で最初に旅行したのが、中国四大名園の一つ「拙政園」です。この拙政園では明代の庭が再現されており、庭園と庭園の間には必ず洞門と称される円形の門(半底円門)が配置されています。
中国建築において門や窓は額縁であり、そこから広がる光景は額縁の中の絵画として捉えています。そこには、文事を好み、風雅を嗜み、詩文などに秀でる文人が望んだ、俗世界から切り離された自分ひとりのための雅な小世界という意味も込められています。四川省の修行時代、私が住んでいた場所からほど近い公園、望江楼公園の入口にもやはりその洞門がありましたが、その先には竹がアーチのように続き、それはまさに竹林の絵画のようでした。蜀南竹海を訪れてお店の名前を『飄香』に決めた私は、その洞門のことを思い出し、ロゴマークはこれにしようと決めました。
また、新しい飄香の書は中国政府御用達の中国人書道家、熊峰(ユウホウ)先生によるものです。
熊峰先生は工学院大学孔子学院客員研究員、21世紀国際書展顧問、華僑大学客員教授、北京師範大学修士指導導師、国際臨書協会会長、上海万博日本館漢字芸術総監督など、数々の肩書を持つ天才書道家であり、中国政府が選んだ「世界で活躍する中国書家・画家188人」にも掲載されている人物です。
このように料理だけではなく、四川省や中国の歴史文化に至る様々なことにインスピレーションを受けて、飄香のブランドやシンボルは形作られているのです。
飄香のお店で伝統四川料理をお楽しみください
伝統四川料理を追求する飄香のこだわり